古典から考える心理学 12~『枕草子』から考える承認欲求
お気楽サラリーマン認定心理士まさだです。
古典の中には心理学で知った事を彷彿させてくれる作品があります。
今回も、『枕草子』を取り上げます。
「承認欲求」。
アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローが提唱した「欲求5段階説」。
人間の基本的欲求を、低次から、「生理的欲求」→「安全の欲求」→「所属と愛の欲求」→「承認の欲求」→「自己実現の欲求 」という5段階に分類しています。
これを初めて知ったのは大学の経営基本管理の講義だったように記憶しています。
さて、この4段階目の「承認の欲求」。
生き延びることで精いっぱいな世界、モノもカネもない貧しい世界では、「生理的欲求」や「安全の欲求」や「所属と愛の欲求」に人は注力するかと思います。
しかし、法律や社会制度が一定レベル整備され、生き延びることやモノもカネもないことへの悩みがなくなると、次の欲求である「承認の欲求」に注目が集まるのかもしれませんね。
第二二段
すさまじきもの。昼ほゆる犬。春の網代(あじろ)。三、四月の紅梅の衣(きぬ)。牛死にたる牛飼ひ。
(略)
よろしうよみたりと思ふ歌を人のもとにやりたるに、返しせぬ。懸想人はいかがせむ。
それだに、折をかしうなどある返りごとせぬは心劣りす。
(略)
「よろしうよみたりと思ふ~」の部分を現代語にすると
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上手くできたと思う和歌を手紙に書いてあげたのに、返事がないのはがっかり。
それが恋文であれば、相手もあることなので、興ざめとはいえない。
でも、そんな場合でも打てば響くよな返事がなければ、この人だめだなあと思う。
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といったところでしょうか。
清少納言先生も「承認欲求」には抗えないといったところでしょうか・
でも、この時代、社会全体がそうだとは言えませんが、少なくとも清少納言先生の周辺では「生理的欲求」や「安全の欲求」や「所属と愛の欲求」がある程度は充足され、いよいよ次の段階の欲求「承認の欲求」を求めることができる状態だったのかもしれませんね。
引用・参考文献
清少納言(著)、 池田 亀鑑(訳)(2021).枕草子、 岩波文庫
清少納言(著)、 島内 裕子(訳)(2017).枕草子(上)、 岩波文庫
清少納言(著)、 島内 裕子(訳)(2017).枕草子(下)、 岩波文庫
森 津太子(著)(2015).現代社会心理学特論 放送大学教育振興会